損害賠償の請求

損害賠償の請求

交通事故の損害賠償は、誰が誰に対して請求を行うのでしょうか?

 

簡単に言うと、被害者が加害者に対して行います。それでは誰が行うのでしょうか?それは、被害者が軽傷で、自身でできる場合には、自分の受けた経済的損害と慰謝料の請求を行います。

 

しかし、被害者が重傷を負っている場合や死亡した場合、子ども、あるいは高齢者など自分で請求を行うことが不可能なときは、「相続人」が請求することになります。

【例】 タカシさんのケース

@誰が行うのか?
タカシさんは、横断歩道を渡っている途中、居眠り運転の車に接触され、死亡しました。タカシさんには妻マユミさんがおり、再来月子ども(第1子)が生まれる予定です。さらに、タカシさんには、田舎に仕送りをしている母ハナコさん(タカシさんの実母)がいます。

 

民法で配偶者と子どもは常に相続人になり、親・兄弟は子がいないときに相続人になると定められています。ですから、このケースの場合、請求権利があるのは、相続人である妻マユミさんと、生まれる予定の子ども(相続においては既に生まれたものとみなされるため)です。

 

では、母ハナコさんは何も請求できないのでしょうか? そんなことはありません。

 

被害者の父母、配偶者、子どもは、民法で損害賠償請求のほかにそれぞれ自分自身の慰謝料を請求することが認められています。ハナコさんは、相続人にはなれませんが、加害者に対して、慰謝料を請求することができます。

 

A.誰に行うのか?
交通事故の損害賠償を請求する相手(賠償義務者)は、「運転者(加害者)」「雇い主」「運行供用者」「未成年者の親」などがあげられます。特殊な例として、道路の管理にミスがあった場合には「国・地方公共団体」が責任を負うこともあります。

 

一番多いのは、故意や過失によって、傷害を負わせ、車や建物を損壊した「運転者」への請求でしょう。
また、従業員が、業務で運転中に違法な行為をして損害を与えた場合、使用者である企業に損害賠償の請求ができます。

 

難しいのは、「運行供用者」といい、従業員が会社の車を使用して事故を起こした場合、たとえそれが無断使用であっても、会社が責任を負うことになるというケースや、友人に車を貸していたら事故を起こし、車の貸主も責任を負わなければならなくなったといったケースがあります。
 最近多いのが、子どもが親の車を乗り回して事故を起こすケースで、親は運行供用者として、賠償責任を負うことになります。
事故を起こした車が子どものものであっても、責任能力のない未成年者である場合は、親は監督者責任によって賠償責任を負わなければなりません。
加害者がわからない「ひき逃げ」、保険に加入していない「無保険車」にはねられた場合は、国に請求をします。

 

Bいつ請求を行うのか?
「物損事故」の場合は、修理が終わったとき、または修理の見積もりが出た段階で行うのがいいでしょう。
「人身事故」の場合は、事故現場で加害者側からの示談に応じたり、入院していたり、治療をしているときに始めるのはお勧めできません。医師から「完治」あるいは「症状の固定」などの診断が出てからにします。
「死亡事故」の場合は、葬儀、四十九日が終わってから行います。

 

C損害賠償請求権の時効とは?
 加害者に損害を請求できるのは3年が時効となっています。
 起算日は、「事故日」が原則で、死亡事故の場合は、「死亡日」が起算日となります。
しかし、後遺障害」については、「症状固定日」からとなります。
「時効」が心配な人は、保険会社から「時効中断申請書」の用紙をもらい、提出しておくといいでしょう。

 

D損害賠償の範囲
(傷害事故の場合)
交通事故でケガをすると、長期入院など、被害者はさまざまな不利益を被ることになります。加害者に請求できるものとして、治療費・入院費・通院交通費・入院中の諸雑費、診断書等の文書料などがあります。また、入院治療のため、仕事ができず、収入がもらえなかった場合、休業損害も請求できます。ただし、学生や幼児、無職者は請求できませんので注意しましょう。


精神的苦痛についても慰謝料の請求ができます。
被害者の状況によって、例えば事故が原因で就職が遅れ、得られるべき収入が得られなかったなどで逸失利益の請求を行う、事故による流産で精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求するといったケースもあります。

 

(死亡事故の場合)
加害者からのどんな償いも、遺族の深い悲しみを癒やすことはできません。
しかし、その損害を金銭的に算定し、加害者に賠償を求めていくしか他に方法はありません。残された遺族は精神的な損害と経済的な損害を受けます。
私の家族の場合、事故に遭い、死亡するまでに一定の時間がありました。その間に受けた医療費、亡くなってからは葬儀の費用、生きていれば得られたであろう収入(逸失利益)、慰謝料などを請求しました。

 

請求すれば、なんでももらえるか、というとそうではありません。個室使用料は医師の指示があれば可能ですが、見舞客の接待費用や謝礼、パジャマやテレビ、ラジオなどの入院雑費は認められず、葬儀の費用は認められても、香典返しなどの費用は認められません。被害者だからといって、過大かつ非常識な請求は慎まなければなりません。

私の体験からひとこと

家族を傷つけられた、あるいは亡くした場合、なかなか加害者を許すことができません。逃げ回ったり、謝罪がなかったりということが重なるとなおさらです。ついついこちらも感情的になってしまいます。

 

交渉は加害者と直接行うのではなく、保険会社の人と行いましょう。

 

保険会社の人は加害者ではありません。けんか腰な態度は慎みましょう。

 

しかし、事故後の保障処理に長(た)けた保険会社の人は、次から次とこちらを挑発するようなことを言うことがあります。というより、言います。補償金額を少しでも抑えたいと考えているのだから当然です。売り言葉に買い言葉で、保険会社の挑発に乗らないように注意しましょう。
私に知人は、この挑発に乗ってしまい、「もうお前と二度と会いたくない。これでいい。」と、損害額に見合わない低い金額にもかかわらず交渉を終え、後からひどく後悔していました。

 

何も保険会社からぼったくれと言っているのではありません。

 

保険会社はプロです。それに対し、被害者側は素人です。不安があれば、相手の条件を呑まず、保留にして交通事故に詳しい弁護士や専門機関に相談をしましょう。

 

ただ、注意して欲しいのは、保険会社から紹介された弁護士や保険会社に近い弁護士に相談しないということです。私の場合は、交通事故相談の窓口に行き、加害者の保険会社名を言ったところ、その保険会社に関係のない弁護士を紹介してもらえました。

 

冷静に対処し、これから新しい一歩を踏み出すために、実利を追求してほしいのです。