損害賠償の範囲

交通事故により就職が遅れてしまったケース

損害は果たしてどこまで賠償してもらえるのか?これはどうなのだろう?というケースを取り上げてみたいと思います。

 

 ダイスケさんは、大学1年生のときに事故に遭い、3度の手術とリハビリなどで2年間休学しました。この春、ようやく復学しましたが、同級生より2年遅れて卒業・就職ということになります。本来なら得られるはずだった、この遅れた2年分の収入は補償されないのでしょうか。

 

ダイスケさんが長期の療養を余儀なくされ、2年間の休学をした場合、いろいろな損失が生じます。まず、無駄になってしまった授業料や当時コンビニでアルバイトをしていたアルバイト料などが損害として請求できます。それよりも問題なのは、事故に遭わなければ、2年遅れることなく卒業できたということです。つまり、遅れたために、得られるはずの2年分の収入を失ってしまうということです。

 

この場合、事故で就職が遅れたのは明白ですから、この期間の逸失利益が認められることになります。


事故のために取引がダメになってしまったケース

ユウキさんは前方不注意のため、信号で停車中の車に追突してしまい、相手にケガを負わせてしまいました。

 

相手は不動産業者で、「事故のために大きな取引がダメになってしまったから、その分の損害も賠償してもらわないと困る。」と言ってききません。
大きな取引だっただけに、高額を要求され、困っています。

 

もし、加害者が事故による損害を負わなければならないのは当然のことです。しかし、事故との因果関係が認められれば、なんでも、すべての損害を賠償しなければならないということになれば、加害者にとってそれは大変酷なことです。そこで、ある程度責任の範囲が限定されています。
このケースのユウキさんのように、「多額の利益に絡むような取引がダメになったから、損害を賠償してほしい」などと言われた場合は、加害者は途方に暮れてしまいます。

 

この場合、「予見することができた場合に限って責任の範囲となる」という民法に従って判断します。被害者不動産業者が大きな取引をしようとしている事情は、ユウキさんには予見できないことでした。たまたま事故と重なった、一時的な収入の損失は特別な損害と考えます。

 

ユウキさんにこのような大きな損害を予見できる可能性はなかったと見られ、賠償責任はないと思われます。

ペットが死亡

歩道に突っ込んできた車に愛犬ジョンがはねられました。家族同様に暮らしてきたため、ジョンを失い、カオルさんは毎日つらく、悲しい日々を過ごしています。

 

加害者側は謝罪したものの、「ペットは人間ではない」という理由で、損害賠償を拒んでいます。ペットが交通事故に遭った場合、損害賠償は請求できないのでしょうか。

 

最近ペットを飼う人が増え、それに伴い事故に遭うペットも多くなってきました。

 

慰謝料だけでなく、治療費や葬儀費用などペットの損害を認める判決が多くなり、すべてではありませんが、賠償が認められています。

 

似たようなケースに、盲導犬が事故に遭うということがあります。しかし、このケースの場合、盲導犬はペットではなく、目の不自由な人の、体の一部という考え方をするため、ペットとは別の方法で賠償の判断がなされます。

そのほかのケース

「交通事故で治療中に、また事故に遭ってしまった」というケースや「被害者にリウマチなどの既往症がある場合」「友人の車に同乗中事故に遭い、ケガをしてしまった」など、交通事故には事故の態様、被害者の状況などの違いから、事故の数だけ賠償の方法も違うと言っていいでしょう。
交通事故についてはその知識がない人が多いうえ、双方の主張・意見の食い違いから、話し合いがこじれ、進まないということが多々あります。

 

事故が複雑で、なおかつ特殊なケースは裁判になることも多く、民法など法律の知識が必要になり、素人ではわからないことも数多く出てきます。交通事故に詳しい弁護士など、専門家になるべく早く相談することをお勧めします。